花粉症では発熱などの全身症状は少なく、高熱は風邪など別の原因も含めて判断する必要があります。
特に38℃以上の発熱、悪寒、強いのどの痛みがある場合は、体温だけで花粉症と決めつけず、症状の経過と全身状態を確認しましょう。
花粉症で熱は出る?公的資料から分かる結論
花粉症は、スギやヒノキなどの花粉に対して免疫が過剰に反応するアレルギー疾患です。医学的には季節性アレルギー性鼻炎に分類され、くしゃみ、透明な鼻水、鼻づまり、目のかゆみや涙が代表的な症状です。
厚生労働省の解説「はじめに~花粉症の疫学と治療そしてセルフケア~」では、厚生労働省研究班の調査結果として、スギ花粉症では発熱などの全身症状は少ないと説明されています。
つまり、熱っぽさやだるさを感じることはあっても、花粉症だけを理由に明らかな発熱や高熱が続くと考えるのは慎重であるべきです。
厚生労働省の一般向け冊子「的確な花粉症の治療のために」に掲載された簡易チェックでは、「熱はない・あるいは37.5℃以下」と「37.6℃以上」を分けて確認しています。
ただし、この数字は花粉症を診断する基準ではありません。冊子にも簡易チェックは目安であり、風邪との区別は医師でも難しい場合があるため、気になるときは診断を受けるよう示されています。
したがって、「37.5℃以下なら花粉症」「37.6℃以上なら風邪」と機械的に分けることはできません。平熱、測定時間、運動、入浴、厚着、室温などによっても体温は変わります。
大切なのは、次の三点です。
- 花粉症で発熱などの全身症状が出ることは多くない
- 体温の数字だけでは花粉症と感染症を区別できない
- 高熱や全身症状があるときは、花粉症以外の原因も考える
鼻づまりで眠れなかった翌朝などは、体温が高くなくても、だるさやほてりを「熱がある」と感じることがあります。まずは感覚だけで判断せず、落ち着いて体温を測ってください。
反対に、実際に発熱しているのに「毎年花粉症だから」と片づけるのも避けたいところです。春先は花粉症と風邪、インフルエンザなどが同じ時期に起こる可能性があり、両方を同時に発症することもあります。
花粉症と風邪の違いは?症状の組み合わせで見分ける
花粉症と風邪には、鼻水、くしゃみ、鼻づまり、のどの違和感、だるさなどの共通点があります。一つの症状だけではなく、目・鼻・のど・全身の症状を組み合わせて見ることが重要です。
| 確認する点 | 花粉症に多い傾向 | 風邪などの感染症に多い傾向 |
|---|---|---|
| 発熱 | 発熱などの全身症状は少ない | 発熱や悪寒を伴うことがある |
| 鼻水 | 透明で水のようにさらさらしやすい | 初めは透明でも粘りが出る場合がある |
| くしゃみ | 連続して何度も出やすい | 花粉症ほど連続しないことが多い |
| 目の症状 | かゆみ、涙、充血が出やすい | 目のかゆみは通常目立ちにくい |
| のど | 乾燥感や軽い違和感が中心 | 痛みや飲み込みにくさが出る場合がある |
| 全身症状 | 鼻づまりや睡眠不足によるだるさ | 悪寒、筋肉痛、食欲低下などを伴うことがある |
| 症状の変化 | 花粉飛散や外出と連動しやすい | 数日かけて症状の種類や強さが変わりやすい |
| 周囲への感染 | 花粉症そのものは人にうつらない | 原因となる病原体によっては人にうつる |
この表は、あくまで傾向を整理したものです。鼻水の色や熱の高さだけで病名を確定することはできません。
花粉症を考えやすい手がかりは、目の強いかゆみ、透明でさらさらした鼻水、連続するくしゃみです。毎年ほぼ同じ時期に症状が現れ、外出後や花粉の飛散が多い日に悪化することも判断材料になります。
風邪などの感染症を考える手がかりは、悪寒、発熱、強いのどの痛み、筋肉痛、食欲低下などです。家族や職場、保育園、学校で似た症状の人が増えている場合も、感染症を疑う材料になります。
症状が始まった順番にも注目してください。
外出後に目がかゆくなり、透明な鼻水と連続するくしゃみが増えたなら、花粉との関連を考えやすくなります。一方、のどの痛みから始まり、翌日に発熱し、その後に咳が強くなるような経過では、感染症も検討する必要があります。
ただし、花粉症がある人も風邪やインフルエンザにかかります。目のかゆみがあるから感染症ではない、透明な鼻水だから花粉症だけだとは限りません。
これは、晴れの日と寒い日が同時にあるのと似ています。二つの状態は互いを打ち消すものではなく、花粉症と感染症が重なる可能性もあるのです。
38℃以上の発熱なら何を考える?
38℃以上の発熱があるからといって、原因を体温だけで決めることはできません。しかし、花粉症では発熱などの全身症状が少ないため、高熱があるときは別の病気が隠れていないか確認する必要があります。
候補になるのは、風邪と総称される急性上気道炎、インフルエンザなどの感染症、副鼻腔炎などです。症状や流行状況によっては、その他の感染症も検討されます。
風邪などの感染症
発熱に加えて、悪寒、のどの痛み、咳、筋肉痛、食欲低下がある場合は、感染症を考える手がかりになります。
インフルエンザでは比較的急に発熱や全身のだるさが現れることがあります。ただし、症状の強さには個人差があり、検査の必要性や診断は医師が総合的に判断します。
感染症が疑われるときは、花粉を避けるだけでは十分ではありません。手洗いや咳エチケットを行い、タオルや食器の共用を控えるなど、周囲へ広げない配慮も必要です。
急性副鼻腔炎
鼻づまりや鼻水が長引き、頬、目の周り、額に痛みや圧迫感がある場合は、副鼻腔炎の可能性もあります。
粘り気のある鼻水、においを感じにくい、頭を下げると顔が痛むといった症状が手がかりになることがあります。ただし、鼻水の色だけで細菌感染の有無を判断することはできません。
花粉症による鼻の炎症に別の問題が重なっている可能性もあるため、症状が長引く、途中から悪化する、顔の痛みや発熱を伴う場合は耳鼻咽喉科などへ相談してください。
鼻づまりによる睡眠不足と疲労
鼻づまりが強いと、口呼吸になったり夜中に何度も目が覚めたりします。その結果、頭が重い、体がほてる、集中できない、強くだるいと感じることがあります。
この場合は、実測した体温が平熱のこともあります。「熱っぽい」という感覚と、体温計で確認した「発熱」を分けて考えると状況を整理しやすくなります。
睡眠不足によるだるさは軽視できませんが、発熱そのものを説明できるとは限りません。体温が上がっている場合は、鼻づまりだけに原因を求めないようにしましょう。
薬による眠気やだるさ
花粉症に使われる抗ヒスタミン薬の中には、眠気やだるさが現れるものがあります。薬を飲み始めてから体が重く感じる場合は、副作用の可能性も確認してください。
ただし、薬による眠気と発熱は別の問題です。体温が高い場合や体調が悪化している場合は、薬のせいだと自己判断せず、医師や薬剤師へ相談しましょう。
鼻炎薬と風邪薬には同じ種類の成分が含まれていることがあります。複数の市販薬を重ねて飲んだり、自己判断で量を増やしたりしないでください。
発熱時はどう対処する?受診の目安も確認
発熱があるときは、まず安静にして体温と症状を記録します。測定時刻、最高体温、鼻水、咳、のどの痛み、悪寒、水分摂取の状況を残しておくと、受診時の説明に役立ちます。
水分は一度に大量に飲むのではなく、体調に応じて少量ずつ取ってください。食欲がなくても、水分を飲めているか、尿が出ているかは重要な観察点です。
寒気がある間は無理に薄着にせず、暑がるようになったら衣服や寝具を調整します。汗をかかせれば早く治るという考えで厚着を重ねると、かえってつらくなることがあります。
次のような場合は、診療時間内に医療機関へ相談することを検討してください。
- 38℃以上の発熱が続いている
- 発熱がいったん下がった後に再び悪化した
- 強い悪寒、頭痛、筋肉痛がある
- のどが強く痛み、水分を飲みにくい
- 咳が増え、眠れないほどつらい
- 鼻づまりや鼻水が長引き、顔や額も痛む
- 食事や水分を十分に取れない
- 持病があり、普段と異なる症状がある
- 症状のために睡眠や日常生活が保てない
38℃という数字は、受診の必要性を自動的に決める境界線ではありません。38℃未満でも、呼吸や意識の状態が悪ければ緊急性は高くなります。
呼吸が苦しい、唇の色が悪い、意識がはっきりしない、呼びかけへの反応が鈍い、けいれんが続くといった場合は、通常の診療時間を待たず、救急要請を含めて速やかに対応してください。
子どもの発熱で重視したいこと
子どもの場合は、体温の数字だけでなく、機嫌、呼吸、水分、尿、意識などの全身状態を確認します。
こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版、2023年10月一部修正)」では、発熱時の体温はあくまで目安であり、一人ひとりの平熱に応じて判断することが重要だとされています。
同ガイドラインでは、38℃以上の発熱があり、元気がなく機嫌が悪い、咳で眠れない、排尿回数が減っている、食欲がなく水分を取れない場合を、保護者への連絡が望ましい状態として挙げています。
さらに、発熱の有無にかかわらず、顔色が悪く苦しそう、呼吸が速い、意識がはっきりしない、頻繁な嘔吐や下痢がある、ぐったりしている場合は、至急受診が必要と考えられる状態です。
生後3か月未満の乳児の発熱は、年長児や成人と同じ感覚で様子を見ないでください。38℃以上の発熱がある場合は、速やかに医療機関へ相談する必要があります。
休日や夜間に子どもの受診を迷ったときは、全国共通の子ども医療電話相談「#8000」を利用できます。小児科医師や看護師から、家庭での対応や受診先について助言を受けられます。
#8000の受付時間は都道府県によって異なり、変更される場合もあります。緊急性が高いと感じるときは電話相談だけで待たず、119番を検討してください。
何科を受診すればいい?
発熱、悪寒、強いだるさ、咳、のどの痛みなど全身症状が中心なら、成人は内科、子どもは小児科が主な相談先です。
くしゃみ、鼻水、鼻づまり、顔の痛みなど鼻の症状が中心なら、耳鼻咽喉科が適しています。目のかゆみや充血が強い場合は、眼科へ相談する選択肢もあります。
花粉症か風邪か分からない場合は、最初から診療科を完全に選び分ける必要はありません。かかりつけ医、内科または小児科へ相談し、必要に応じて専門科を紹介してもらう方法があります。
受診前に医療機関へ連絡するときは、次の情報を伝えると状況が分かりやすくなります。
- 発熱が始まった日時と最高体温
- くしゃみ、鼻水、目のかゆみの有無
- 咳、のどの痛み、悪寒の有無
- 水分、食事、尿の状況
- 服用した薬の名前と時刻
- 家族や園、学校、職場での感染症の状況
筆者が勧める症状記録の方法
わたしが暮らしの中で実践しやすいと考えるのは、症状を一回の検温だけで判断せず、体温・症状の組み合わせ・全身状態・時間経過という四つの軸で記録する方法です。
これは花粉症や風邪を自分で診断するための方法ではありません。医師へ経過を正確に伝え、必要な診察や薬の選択につなげるための生活上の工夫です。
朝、昼、夜の体温だけでなく、その日に外出した時間、目のかゆみ、鼻水、咳、のどの痛み、悪寒の有無を簡潔に記録します。
子どもなら、水分をどの程度飲めたか、尿が出たか、眠れたか、普段のように遊べたかも残してください。大人でも、食事や睡眠、仕事への影響を書いておくと全身状態を説明しやすくなります。
例えば、次のような形です。
- 午前7時:36.7℃、目のかゆみあり、透明な鼻水
- 午後1時:37.1℃、外出後にくしゃみが増加、悪寒なし
- 午後7時:38.0℃、のどの痛みとだるさが出現
- 服薬:午前8時に花粉症薬、商品名と成分を記録
- 水分・食事:水分は取れるが、食事は半量
- 周囲の状況:家族に発熱者はいない
この例では、日中の目や鼻の症状だけなら花粉との関連を考えられますが、夜の発熱とのどの痛みまで花粉症だけで説明できるとは限りません。感染症など別の原因も含めて相談する材料になります。
花粉症は、花粉への接触に応じて症状が揺れやすい傾向があります。外出後に悪化し、室内で落ち着くという繰り返しが記録されれば、医師にとっても参考になります。
感染症では、時間とともに症状の組み合わせが変わることがあります。最初はのどの違和感だけだったのに、翌日に発熱し、その後に咳が増えたという流れは、一回の検温では見えません。
わたしは、体温計の数字を「答え」ではなく「経過を知るための一つの情報」と考えるのが現実的だと思います。数字だけに縛られず、呼吸、水分、意識、普段との違いまで一緒に見ることが大切です。
春先は寒暖差や生活環境の変化も重なり、疲れを感じやすい季節です。だからこそ、熱っぽさをすべて花粉症のせいにせず、反対に一度の体温上昇だけで重い病気だと思い込まず、経過を落ち着いて観察しましょう。
まとめ
花粉症では、くしゃみ、透明な鼻水、鼻づまり、目のかゆみが中心で、厚生労働省の解説でもスギ花粉症による発熱などの全身症状は少ないとされています。
熱っぽさを感じることはありますが、実際の発熱が花粉症によるものかは体温だけでは判定できません。特に高熱、悪寒、強いのどの痛み、咳、筋肉痛、顔の痛みがある場合は、感染症や副鼻腔炎なども考える必要があります。
見分けるときは、目や鼻の症状、全身症状、花粉飛散や外出との関係、数日間の変化を確認してください。花粉症と感染症が同時に起きる可能性もあります。
受診の緊急性は、38℃という数字だけではなく、呼吸、意識、水分摂取、尿、普段との違いを含めて判断します。呼吸困難や意識の変化などがあれば、体温にかかわらず速やかな対応が必要です。
よくある質問
花粉症で38℃以上の熱が出ることはありますか?
花粉症では発熱などの全身症状は少ないため、38℃以上の熱がある場合は花粉症だけと決めつけないでください。感染症や副鼻腔炎など別の原因も含め、症状の経過と全身状態を確認する必要があります。
37℃台なら花粉症による微熱ですか?
37℃台という数字だけでは判断できません。平熱や測定条件によっても体温は変わり、感染症の初期にも37℃台になることがあるため、目のかゆみ、鼻水、悪寒、のどの痛み、時間経過を一緒に見てください。
花粉症と風邪が同時に起こることはありますか?
あります。花粉症がある人も感染症にかかるため、目のかゆみや透明な鼻水があっても、発熱、悪寒、強いのどの痛み、筋肉痛などが加わった場合は医療機関へ相談してください。
子どもの発熱は何℃から受診が必要ですか?
体温だけで一律には決められません。呼吸が苦しそう、意識がはっきりしない、水分を飲めない、ぐったりしている場合は、熱の高さにかかわらず速やかな相談が必要です。生後3か月未満で38℃以上の場合も、早急に医療機関へ相談してください。
本記事は、厚生労働省「的確な花粉症の治療のために」「はじめに~花粉症の疫学と治療そしてセルフケア~」、こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版、2023年10月一部修正)」、厚生労働省「子ども医療電話相談事業(#8000)」を確認して作成しています。
本記事は医師による個別診断や医療監修に代わるものではありません。症状や治療について判断に迷う場合は、医師または薬剤師へ相談してください。
執筆:東雲 朝陽(ライフスタイルライター)


