「毎年春になると鼻がムズムズするけど、これって花粉症?」——そう感じている人に先に答えを言うね。花粉症とは、スギやヒノキなどの花粉が原因で起こる季節性アレルギー性鼻炎(アレルギー性結膜炎を伴うこともある)のこと。原因はIgE抗体という免疫物質が花粉に過剰反応することにあるの。
わたしはこれまで、耳鼻咽喉科の待合室や薬局の店頭で花粉症に悩む人たちの声を取材する機会が何度かあったんだけど、症状の重さは人によって本当にバラバラなの。
同じ量の花粉を浴びていても、平気な人もいれば、目も開けられないほどつらい人もいる。この違いを生む仕組みから、今日は分かりやすくひも解いていくわね。
花粉症とは?正式名称と「アレルギー性鼻炎」との関係
花粉症の医学的な正式名称は「季節性アレルギー性鼻炎」。英語ではhay fever(枯草熱)とも呼ばれていて、かつては日本でも「枯草熱」という呼び方が使われていたの。
アレルギー性鼻炎には2種類あるのよ。
- 季節性アレルギー性鼻炎:花粉のように特定の季節だけ症状が出るタイプ
- 通年性アレルギー性鼻炎:ハウスダストやダニのように一年を通して症状が出るタイプ
花粉症はこのうち季節性アレルギー性鼻炎の代表格というわけね。
くしゃみ・鼻水・鼻づまりの「鼻の三大症状」に加えて、目のかゆみ・充血・涙目といった「目の三大症状」が出るのも花粉症の大きな特徴。
耳鼻咽喉科の領域では、目の症状を除いた3つを「三大症状」と呼ぶこともあるわ。人によっては皮膚のかゆみが出る「花粉皮膚炎」が現れることもあるの。
風邪との違いも整理しておくね。
風邪はだいたい1週間程度で治まるけれど、花粉症は原因の花粉が飛んでいる間ずっと症状が続くのが特徴。
しかも花粉症の鼻水はサラサラとした水っぽいものが多く、風邪のように途中で黄色や緑っぽい粘り気のある鼻水に変わっていくことは基本的にないの。屋外にいるほうが症状が強くなる、というのも見分けるヒントになるわね。
なぜ花粉症は起こる?IgE抗体とアレルギー反応の仕組み
ここが花粉症を理解するいちばんの核心部分。花粉症は医学的には「I型アレルギー」に分類される免疫反応なの。
花粉が鼻や目の粘膜に触れると、体はそれを「異物」と認識して、IgE抗体という物質をつくり出すわ。
このIgE抗体は、アレルギー反応に深く関わる「肥満細胞(マスト細胞)」という細胞にくっついて待機するの。
そして再び花粉が侵入してIgE抗体と結びつくと、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンといった化学伝達物質(ケミカルメディエーター)が放出される。
ヒスタミンは知覚神経を刺激してかゆみやくしゃみを引き起こし、ロイコトリエンは血管を広げて粘膜を腫れさせる、つまり鼻づまりの原因になるといわれているわ。
面白いのは、このIgE抗体は花粉に触れるたびに少しずつ体に蓄積されていく点。
よく「アレルギーのコップ」にたとえられるんだけど、コップに水(IgE抗体)がゆっくり溜まっていって、ある日あふれた瞬間に症状として現れる。
「去年までは平気だったのに、今年急に発症した」という現象の正体は、これなの。一度この“感作”が成立すると、自然に治ることは難しいとされているのよ。

花粉症の原因植物は?スギが圧倒的に多い理由
花粉症を引き起こす植物は60種類以上あるといわれているわ。代表的なものを飛散時期とあわせて挙げてみるね。
- スギ(1月〜4月ごろ):花粉症の原因植物の代表格。本州・四国・九州の山地に多い
- ヒノキ(3月〜4月ごろ):スギに似たアレルギー物質を持ち、スギ花粉症の人の7〜8割が反応するといわれる
- イネ科(カモガヤなど、5月〜6月ごろ):スギ・ヒノキに次いで患者が多い
- ブタクサ・ヨモギ(8月〜10月ごろ):秋の花粉症の代表格
- シラカンバ(3月下旬〜6月ごろ):スギの少ない北海道で特に多い
日本でスギ花粉症が突出して多いのには理由があるの。
第二次世界大戦後、木材資源をまかなうために全国で大量のスギが植林されたんだけど、その後に安価な輸入材が普及したことで、伐採されずに残ったスギが多かったの。
植えてから花粉を飛ばすまでにはおよそ30年ほどかかるといわれていて、成長したスギ林が今、毎年大量の花粉をまき散らしているというわけ。林野庁の統計によると、全国の森林のおよそ18%をスギが占めているとされているのよ。
地域差もはっきりしているの。関東・東海ではスギ花粉症が多い一方、九州ではヒノキ花粉症が、スギの少ない北海道ではシラカンバ花粉症が目立つ傾向にあるわ。
つまり花粉症は「体質の問題」であると同時に、戦後の国土政策が生んだ「土地の問題」でもある、とわたしは考えているの。
花粉症の患者はどれくらいいる?増加を裏づけるデータ
「最近、花粉症の人が増えた気がする」と感じている人は多いと思うけど、それは気のせいじゃないのよ。
耳鼻咽喉科の専門医らが実施した全国疫学調査(鼻アレルギー診療ガイドラインの基礎データ、2019年)によると、アレルギー性鼻炎全体の有病率は49.2%、そのうちスギ花粉症だけでも38.8%にのぼると報告されているの。
同じ研究グループが1998年に行った調査では、アレルギー性鼻炎全体が29.8%、スギ花粉症は16.2%だったから、20年ほどでほぼ倍増していることになるわね。
年代別に見ても20代から50代まで幅広い世代でスギ花粉症の有病率が45%を超えていて、もはや一部の人だけの悩みではなくなっているの。
日本で花粉症がはじめて報告されたのは、実はそれほど昔のことではないのよ。
1961年にブタクサ花粉症が、続いて1963〜1964年にスギ花粉症が学会で報告されたのが最初。
栃木県日光市で春先に鼻や目の症状を訴える患者が多いことに気づいた研究者が、日光杉並木を見てスギ花粉アレルギーを疑い、その因果関係を明らかにしたというエピソードが伝わっているわ。
戦後の植林から発症の報告まで、時代の流れがそのまま関係しているのが興味深いところよね。
患者数が増えた背景には、複数の要因が重なっていると考えられているの。
- スギの成長による花粉飛散量そのものの増加
- 大気汚染物質が花粉に付着し、アレルギー反応を強めている可能性
- 食生活の欧米化による腸内環境の変化
- 感染症の減少によって免疫のバランスが変わったこと

花粉症の主な症状と、見逃しやすい二次的な症状
改めて症状を整理すると、代表的なのはくしゃみ・鼻水・鼻づまりの鼻症状、そして目のかゆみ・充血・涙といった目症状ね。
これに加えて、体がだるい、微熱っぽい、集中力が落ちる、イライラするといった全身症状を伴う人も少なくないの。
鼻づまりで口呼吸が増えると喉や口の粘膜が乾燥して、風邪をひきやすくなってしまうという悪循環も起きやすいわ。
朝の目覚めの直後にくしゃみや鼻づまりが一気に強く出る「モーニングアタック」という現象もよく知られているの。
就寝中に吸い込んだ花粉の影響や、寝起きの自律神経の切り替えがうまくいかないことが関係していると考えられているのよ。
またカバノキ科(シラカンバなど)の花粉症の人では、リンゴやモモなど特定の果物を食べると口の中がピリピリ・かゆくなる「口腔アレルギー症候群」が出ることもあるの。
これは花粉と果物のアレルゲンの構造がよく似ているために、体が同じ異物として反応してしまう「交差反応」が原因とされているわ。
花粉症かどうかはどう確認する?検査と治療の基本
「これって本当に花粉症?」と自己判断するより、まずは医療機関を受診するのがいちばん確実よ。主な検査には次のようなものがあるの。
- 血液検査:血中のIgE抗体の量や、特定の花粉に反応するIgE抗体の有無を調べる
- 皮膚反応検査:花粉のエキスで皮膚を刺激し、反応をみる
- 鼻粘膜誘発テスト:花粉エキスをしみ込ませた紙を鼻粘膜に当てて反応をみる
治療は大きく分けて、症状を抑える「対症療法」と、体質そのものを変えていく「根治療法」の2つ。
対症療法では抗ヒスタミン薬、鼻づまりが強い場合は抗ロイコトリエン薬、鼻噴霧用ステロイド薬などが使われることが多いわ。
一方、根治療法として注目されているのが、原因となる花粉のエキスを少量ずつ体に取り込んで体質を変えていく「アレルゲン免疫療法」。
舌の裏に薬をたらす舌下免疫療法は、2014年にスギ花粉症を対象とした薬剤(シダトレン)が厚生労働省の承認を受け、通院の負担が少ない方法として関心が高まっているの。
ただし効果を得るには3〜4年ほどの継続治療が必要とされていて、花粉が飛んでいない時期から治療を始める必要がある点は覚えておいてね。効果や適応には個人差があるから、始めるときは必ず医師に相談してほしいわ。
考察:花粉が少ない年でも「つらさ」は減らない理由
ここからは、記者としてのわたし自身の見方も交えて少し掘り下げてみるわね。
気象情報大手のウェザーニューズが行った花粉症に関する調査では、前シーズンよりも花粉飛散数が大きく減る予想だった年でも、花粉症の人の過半数が「症状は去年と同じ、もしくは重い」と回答したという結果が出ているの。
これは個人的にとても示唆的なデータだと思っていて、花粉の量が減れば症状も比例して軽くなる、という単純な話ではないことを裏づけているのよね。
一度アレルギー反応が慢性化してしまうと、粘膜の過敏性そのものが高まってしまい、多少花粉が減った程度では症状が改善しにくくなる。
先ほど説明した「感作が進むほど、少量の花粉でも反応しやすくなる」という仕組みと、このデータはぴったり符合していると感じるの。
だからこそ「今年は花粉が少ないから大丈夫」と油断せず、毎年同じように対策を続けることが大切だと、わたしは考えているわ。
都道府県別に症状のつらさを比較した同種の調査でも、花粉シーズンへの突入が早かった西日本の地域ほど「症状がつらい」と答えた人の割合が高く、シーズン入りが遅い北日本ほど低い傾向が見られたの。
これは花粉との接触期間の長さが、そのまま体感的なつらさに影響している可能性を示していて、自分の地域の花粉飛散開始時期を早めにチェックしておくことの重要性を教えてくれていると思うわ。
今後の見通しについても触れておきたいの。近年は気温の上昇にともなってスギの開花時期が早まったり、飛散期間そのものが長期化したりする傾向が指摘されているわ。
これが本当だとすれば、花粉症の「つらい期間」は今後さらに延びていく可能性があるということ。舌下免疫療法のように体質そのものにアプローチする治療法への関心が高まっているのも、こうした背景と無関係ではないと筆者としては感じているの。
もうひとつ強調しておきたいのは、花粉症は「体質だから仕方ない」で片づけられる話ではなく、戦後の植林政策や大気環境、食生活の変化といった社会的な背景が積み重なって広がってきた、いわば“時代とともに育ってきたアレルギー”だということ。
個人の対策と同時に、社会全体としての向き合い方も問われているテーマだと感じているの。
まとめ
花粉症とは、スギやヒノキなどの花粉が原因で起こる季節性アレルギー性鼻炎で、IgE抗体と肥満細胞が関わるI型アレルギー反応によって、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみといった症状が引き起こされるのよ。
日本では戦後の植林の影響でスギ花粉症の患者が特に多く、2019年の全国疫学調査ではスギ花粉症の有病率は38.8%、アレルギー性鼻炎全体では49.2%と、いまや国民病と呼べるほど身近な疾患になっているの。
原因や仕組みを正しく知って、自分の症状に合った検査・治療・予防策を選ぶことが、つらいシーズンを少しでも軽く乗り切る近道になるはずよ。
よくある質問
花粉症の正式名称は何ですか?
医学的には「季節性アレルギー性鼻炎」と呼ばれていて、かつては「枯草熱」という呼び方もされていたの。
花粉症とアレルギー性鼻炎は同じものですか?
花粉症はアレルギー性鼻炎の一種で、花粉が原因で特定の季節だけ症状が出る「季節性アレルギー性鼻炎」にあたるわ。ハウスダストなど一年中症状が出るものは「通年性アレルギー性鼻炎」と呼ばれ、区別されているのよ。
花粉症と風邪はどう見分ければいいですか?
風邪はだいたい1週間ほどで治まるけれど、花粉症は花粉が飛んでいる間ずっと症状が続くの。花粉症の鼻水はサラサラと水っぽく、目のかゆみを伴いやすい点も見分けるポイントになるわよ。


