夜泣きが急に増える主な背景は、発達や生活リズムの変化です。ただし、最初に発熱・呼吸・顔色などの体調異常を確認してください。
今まで眠れていた赤ちゃんが、突然何度も起きるようになると、「何か悪いことをしたのでは」と不安になるものです。
けれども、夜泣きは一つの原因だけで起こるとは限りません。月齢による睡眠の変化、分離不安、日中の刺激、歯の生え始め、疲れすぎなどが重なって増えることがあります。
夜泣きが急に増えたとき、最初に何を確認する?
夜泣きが急にひどくなったときは、発達段階を考える前に、赤ちゃんの安全と体調を確認します。
特に次のような様子がある場合は、「いつもの夜泣き」と決めつけないことが大切です。
- 呼吸が苦しそう、呼吸が普段より速い
- 顔色や唇の色が悪い
- 発熱、嘔吐、下痢がある
- ぐったりして反応が弱い
- いつもと違う甲高い声で泣く
- 哺乳量や食事量が急に減った
- 長時間泣き続け、触れ方や抱き方を変えても様子がおかしい
- 日中も元気がなく、眠り方が明らかに変わった
こうした症状がある場合は、小児科や救急相談窓口への相談を検討してください。
明らかな異常がない場合は、空腹、おむつ、鼻づまり、げっぷ、衣類の締めつけ、室内の暑さなどを順番に確認します。
赤ちゃんは言葉で不快感を説明できません。夜の泣き声は、眠りの問題だけでなく、体から届く小さな知らせでもあります。
夜泣きが急に増えた原因は?
夜泣きには医学的に統一された一つの定義があるわけではありません。
一般には、夜に眠っていた赤ちゃんが、はっきりした理由が分からないまま目を覚まして泣き、再び眠るまで時間がかかる状態を指します。
夜泣きが急に増える背景としては、主に次のものが考えられます。
- 睡眠リズムや睡眠サイクルの変化
- 寝返り、はいはい、つかまり立ちなどの発達
- 外出、来客、保育園などによる日中の刺激
- 親と離れることへの分離不安
- 乳歯が生える時期の不快感
- 昼寝や就寝時刻の変化
- 疲れすぎや興奮
- 寝室の光、音、暑さ、寝具
- 空腹、おむつ、鼻づまりなどの不快感
大王製紙の育児情報サイト「グーン」が2024年6月25日から7月1日に実施した調査では、3か月から未就学児のいるクラブエリエール会員559人のうち、約7割が子どもの夜泣きを経験したと回答しています。
ただし、この調査は保護者の記憶に基づくインターネット調査です。医療機関で診断された夜泣きの割合を示すものではなく、家庭によって「夜泣き」と捉える範囲が異なる点には注意が必要です。
同調査では、夜泣きが最もひどかった時期として「生後3か月未満」が最多となり、次いで「生後7〜8か月」「生後5〜6か月」が多く挙げられました。
新生児期から低月齢の頻繁な覚醒を夜泣きとして答えた家庭も含まれるため、一般にいわれる「生後半年以降に夜泣きが目立つ」という説明と矛盾するとは限りません。
ここが、夜泣きの時期に関する情報が資料ごとに違って見える理由です。調査対象、夜泣きの定義、保護者の感じ方が異なれば、ピークの結果も変わります。
夜泣きがひどい時期はいつ?
夜泣きが目立ちやすい時期には大きな個人差があります。
厚生労働省が過去に作成した母子健康手帳の資料では、「6か月頃から夜泣きをする子がふえてきます」と説明されています。
一方、2024年に実施された大王製紙の調査では、生後3か月未満から夜泣きがあったと答えた家庭も多く、終了時期は「1歳6か月以降」が最多でした。
この結果から分かるのは、「何か月がピークか」を一つに決めるより、月齢ごとに背景が変わると考えるほうが実用的だということです。
月齢・年齢 夜間に泣く主な背景
新生児〜生後3か月 空腹、おむつ、昼夜の区別が未発達、短い睡眠周期
生後3〜6か月 睡眠リズムが整う途中、寝返りなどの発達
生後6〜9か月 活動量の増加、日中の刺激、歯の生え始め、分離不安
生後9〜12か月 はいはい・つかまり立ち、分離不安、昼寝の変化
1歳〜1歳半 歩行や感情の発達、断乳、保育園、生活環境の変化
1歳半〜2歳 自我や不安、言葉で表現できない感情、生活リズム
3歳以降 悪夢、環境変化、夜驚症などとの違いに注意
新生児が数時間おきに目を覚ますことは、授乳や排せつが必要な発達段階では自然なことです。
そのため、新生児期の頻繁な覚醒は、ある程度まとまって眠れるようになった後に起こる一般的な夜泣きと分けて考えられる場合があります。
月齢によって夜泣きの原因はどう変わる?
同じように泣いていても、生後4か月と生後10か月では、背景が異なることがあります。
月齢だけで原因を断定することはできませんが、最近できるようになった動きや生活の変化を振り返ると、手がかりが見つかることがあります。
生後3〜6か月は睡眠リズムが変化しやすい
生まれたばかりの赤ちゃんは、大人のような昼夜のリズムがまだ十分に整っていません。
成長とともに夜の睡眠が少しずつまとまっていきますが、毎日同じように眠れるとは限りません。
数日よく眠った後に、再び細かく目を覚ますこともあります。これは「眠れるようになったのに後戻りした」とは限らず、睡眠の仕組みが発達する途中で起こる揺れと考えられます。
この時期に夜泣きが増えた場合は、次の変化を確認してみましょう。
- 起床時刻や就寝時刻が大きくずれていないか
- 夕方に長く眠っていないか
- 寝る直前まで明るい部屋にいなかったか
- 寝返りなど新しい動きが増えていないか
- 授乳量や排せつに変化がないか
生活時刻を分刻みで管理する必要はありません。
朝と夜の違いが穏やかに伝わるよう、朝は部屋を明るくし、夜は照明や声の調子を落とすことから始めます。
生後6〜9か月は刺激と分離不安が重なりやすい
生後半年を過ぎると、寝返り、おすわり、はいはいなどが増え、赤ちゃんが受け取る情報量も一気に増えていきます。
外出や来客のあった日だけでなく、楽しく遊んだ日にも夜の眠りが乱れることがあります。
楽しい刺激も、赤ちゃんにとっては大きな刺激です。昼間に受け取った音や光、人の表情が多い日は、夜になっても興奮が残ることがあります。
また、この時期は親が見えなくなることに不安を感じる分離不安が現れやすくなります。
眠る前には近くにいた人が、目を覚ましたときに見えない。その変化に気づき、「そばにいてほしい」という気持ちが泣き声になることもあります。
この場合、特別な寝かしつけ技を次々に試すより、暗いまま短く声をかけ、そばにいることを伝えるほうが落ち着きやすいことがあります。
生後6〜8か月は乳歯の生え始めも確認する
日本歯科医師会は、最初の乳歯が生後6〜8か月ごろに下の中央から生え始めることが多いと説明しています。
歯が生える時期には個人差があり、必ずこの月齢に始まるわけではありません。
次のような様子が重なっている場合は、歯ぐきの不快感が眠りに影響している可能性があります。
- よだれが増えた
- 手やおもちゃを頻繁にかむ
- 歯ぐきが膨らんで見える
- 日中も不機嫌な時間が増えた
- 授乳や食事を嫌がる様子がある
ただし、発熱、強い下痢、ぐったりした様子などを、すべて歯の生え始めによるものと考えるのは危険です。
体調の変化がある場合は、歯ぐずりと決めつけず、小児科や歯科へ相談してください。
1歳前後は生活環境の変化が影響する
1歳前後は、歩行、言葉、感情表現などが大きく発達する時期です。
保育園への入園、断乳や卒乳、引っ越し、寝室の変更、家族の生活時間の変化が重なると、夜泣きが再び増えることがあります。
「昼間にたくさん遊べば夜は眠る」と考えがちですが、疲れすぎるとかえって寝つきが悪くなる子もいます。
夜に眠ってほしいからと昼寝を大幅に減らすのではなく、夕方の遅い昼寝や、就寝前の刺激を少しずつ調整するほうが負担を抑えられます。
夜泣きが急に増えたときの対処法は?
夜泣きへの対応では、まず体調を確認し、その後は夜の刺激を増やさずに落ち着かせることが基本です。
毎晩同じ方法で必ず泣き止むわけではありません。赤ちゃんの様子を見ながら、負担の少ない対応を順番に試します。
体調と基本的な不快感を確認する
夜中に泣き出したら、次の順番を目安に確認します。
1. 呼吸、顔色、反応を見る
2. 発熱、嘔吐、下痢、鼻づまりを確認する
3. おむつや空腹を確認する
4. 衣類や寝具が顔や体に当たっていないか見る
5. 背中や首元が汗ばんでいないか確認する
室温は、エアコンの設定温度だけでは判断できません。
住宅の断熱性、湿度、寝具、服装、風の当たり方によって、赤ちゃんの体感は変わります。固定された温度を目標にするより、背中や首元の汗、顔色、呼吸、体の冷え方を合わせて確認してください。
激しくなければ短く様子を見る
安全と体調に問題がなく、目を閉じたまま小さく声を出している程度なら、すぐに照明をつけず、短く様子を見る方法があります。
赤ちゃんが睡眠の切り替わりで一時的に声を出し、そのまま眠りに戻る場合があるためです。
ただし、「何分待てばよい」と一律に決めるものではありません。
泣き方が強くなる、呼吸や顔色がおかしい、普段と違う声を出す場合は、すぐに近くで状態を確認します。
暗く静かなまま声をかける
夜中に明るい照明をつけたり、動画を見せたりすると、赤ちゃんが完全に目を覚ますことがあります。
授乳やおむつ交換が必要なときも、可能な範囲で照明を抑え、声かけは短くします。
「大丈夫だよ」「ここにいるよ」と穏やかに伝え、寝床の中でトントンする方法から試します。
それでも泣き方が強い場合は、抱っこして落ち着かせても構いません。
抱き上げることが癖になるのではと心配するより、その日の月齢、体調、家庭の負担に合わせて安全な方法を選ぶことが大切です。
寝る前の短い習慣をそろえる
就寝前に同じ行動を繰り返すことは、眠る時間を知らせる手がかりになります。
米国の睡眠研究者ジョディ・ミンデル氏らが2009年に発表した研究では、7〜36か月の乳幼児と母親405組を対象に、毎晩一定の就寝前ルーティンを取り入れたグループで、入眠までの時間や夜間覚醒などに改善が見られました。
ただし、この研究結果は、特定の習慣を行えばすべての夜泣きが止まることを示すものではありません。
取り入れる場合は、次のような短い流れで十分です。
- 照明を少し落とす
- おむつを替えて寝る服に着替える
- 授乳やミルクを与える
- 絵本や静かな声かけを行う
- 消灯する
大切なのは豪華な内容ではなく、家庭で無理なく続けられる順番です。
同じ流れが繰り返されると、赤ちゃんにとって夜の入り口が少しずつ分かりやすくなります。
夜泣き対策で寝具の安全をどう守る?
夜泣きが続くと、抱いたままソファで眠ったり、大人用ベッドに寝かせたりしたくなることがあります。
しかし、眠りやすさより先に、睡眠中の窒息や事故を防ぐ環境を整える必要があります。
こども家庭庁は、1歳未満の赤ちゃんについて次の点を案内しています。
- 寝かせるときは、医学上の理由がない限りあおむけにする
- 身体が沈まない硬めで平らな寝具を使う
- 寝床に枕、タオル、ぬいぐるみなどを置かない
- 掛け布団ではなく、衣類や空調で寒さを調整する
- 赤ちゃん専用の寝床を用意する
- 大人の体で圧迫する可能性がある添い寝に注意する
米国小児科学会が2022年に発表した安全な睡眠に関する勧告でも、保護者の近くに赤ちゃん専用の寝床を置く「同室・別床」が推奨されています。
同じ部屋で眠ることと、同じ寝具で添い寝することは同じではありません。
特に、保護者が飲酒しているとき、強い眠気を起こす薬を服用しているとき、赤ちゃんが早産や低出生体重で生まれた場合は、添い寝による危険が高まります。
夜泣きで疲れているときほど、ソファやクッションの多い場所で抱いたまま眠り込まないよう注意してください。
病院へ相談したほうがよい夜泣きの目安は?
夜泣きの回数だけで、受診が必要かどうかを判断することはできません。
「何回起きたか」より、普段の状態と比べて何が変わったかを見ます。
次のような場合は、小児科への相談を検討してください。
- 発熱や嘔吐、下痢が続く
- 呼吸が苦しそう、顔色が悪い
- 日中もぐったりしている
- 母乳、ミルク、食事をほとんど取れない
- 体重増加や発達が気になる
- 耳や体の一部を繰り返し触って激しく泣く
- 泣き声がいつもと明らかに違う
- 夜間の覚醒が長期間続き、日中の生活にも影響している
- 保護者の疲労が強く、安全に世話を続けることが難しい
赤ちゃんに明らかな異常がなくても、保護者が眠れず、気持ちや生活に支障が出ているなら相談して構いません。
かかりつけの小児科、自治体の保健センター、保健師、助産師、子育て支援センターなども相談先になります。
3歳以降の激しい泣きは夜驚症との違いを見る
幼児が眠ってから突然起き上がり、激しく泣き叫ぶ、大汗をかく、呼びかけても反応が乏しいという場合は、乳児期の夜泣きとは別の睡眠現象も考えられます。
夜驚症は深い睡眠から部分的に覚醒したときに起こりやすく、翌朝に本人が覚えていないことがあります。
無理に完全に起こそうとするより、転倒や衝突を防ぎながら落ち着くまで安全を確保します。
回数が多い、けがの危険がある、日中の生活に影響する、けいれんとの区別がつかない場合は、小児科や睡眠を扱う医療機関へ相談してください。
夜泣きがひどい時期をどう乗り越える?
ここからは、資料を踏まえたわたし自身の考察です。
夜泣きが急に増えたとき、多くの保護者は「昨日までできていたのに」と感じます。
けれども、赤ちゃんの発達は、階段を一段ずつ上るようには進みません。眠りが乱れたように見える時期に、寝返りやはいはい、人を見分ける力、離れた相手を思う感情が育っていることがあります。
だからといって、すべてを「成長の証」として我慢する必要もありません。
まず体調を確認し、安全な寝床を守る。そのうえで、数日間の生活を眺めます。この順番が大切だと、わたしは考えています。
夜泣きの原因を探すときは、細かな睡眠記録を完璧につけるより、次の五つだけを簡単に残す方法が実用的です。
- 夜に起きたおおよその時刻
- 昼寝が終わった時刻
- 外出や来客など普段と違う出来事
- 発熱、鼻づまり、歯ぐきなど体調の変化
- 落ち着きやすかった対応
一晩だけでは偶然との区別がつきません。記録するなら、負担にならない範囲で3日から1週間ほどの流れを見ます。
たとえば、外出した日の夜だけ泣く時間が長いなら、帰宅後の刺激を減らす手がかりになります。
夕方の長い昼寝が続いた日に寝つきが遅いなら、昼寝の終了時刻を少し見直せます。
記録しても規則性が見えない場合は、それも大切な情報です。「家庭の努力が足りない」のではなく、すぐに調整できる原因ではない可能性があります。
また、夜泣き対策で見落とされやすいのが、保護者の睡眠です。
夫婦や家族が二人とも毎回起きてしまうより、前半と後半で担当を分け、どちらかが数時間続けて眠れる形をつくるほうが安全につながる場合があります。
交代できる人がいない家庭では、昼間の家事を減らす、宅配や一時保育を利用する、自治体の相談窓口へ早めにつながることも選択肢です。
眠れない夜は、窓の外の暗さだけが深くなり、自分だけが朝から遠ざかっているように感じることがあります。
それでも、目標は「必ず泣き止ませること」ではありません。
赤ちゃんと育てる人が、安全に朝を迎えること。それを今夜の合格点にしてよいのだと、わたしは思います。
まとめ
夜泣きが急に増える背景には、睡眠リズムの発達、日中の刺激、分離不安、乳歯の生え始め、昼寝や生活環境の変化などがあります。
ただし、最初に確認するのは原因探しではなく、呼吸、顔色、発熱、嘔吐、哺乳量などの体調です。
明らかな異常がなければ、夜は照明や声の刺激を抑え、トントンや短い声かけ、必要に応じた抱っこで落ち着かせます。
寝床は硬く平らにし、1歳未満はあおむけで寝かせ、枕やぬいぐるみなどを置かないことが安全の基本です。
夜泣きが続く時期や終わる時期には大きな個人差があります。対策をしても泣く夜はあるため、保護者だけの責任だと考える必要はありません。
普段と違う症状がある場合や、保護者の疲労が限界に近い場合は、小児科や地域の育児相談先へ早めに相談してください。
よくある質問
夜泣きが急に増えたのは成長の影響ですか?
成長に伴って増えることがあります。
生後半年以降は運動量や日中の刺激が増え、分離不安や乳歯の生え始めも重なりやすくなります。ただし、発熱、呼吸異常、顔色不良などがある場合は体調不良を先に疑ってください。
夜泣きが一番ひどい時期はいつですか?
特定の月齢に一律のピークがあるとはいえません。
2024年に保護者559人を対象にした大王製紙の調査では、生後3か月未満が最多で、生後7〜8か月、生後5〜6か月が続きました。一方、新生児期の頻繁な覚醒を夜泣きに含めない考え方もあるため、調査の定義によって結果は変わります。
何をしても夜泣きが止まらないときはどうすればよいですか?
まず呼吸、顔色、発熱、空腹、おむつなどを確認します。
異常がなくても保護者が限界を感じた場合は、赤ちゃんを安全な寝床へあおむけに置き、いったん離れて呼吸を整えてください。可能なら家族に交代を頼み、赤ちゃんを強く揺さぶることは避けます。
※この記事は、こども家庭庁、日本歯科医師会、厚生労働省の公表資料、米国小児科学会の2022年勧告、大王製紙が2024年に実施した有効回答559件の保護者調査、ミンデル氏らが2009年に発表した乳幼児405組の就寝前ルーティン研究を参考に、一般的な育児情報として整理したものです。公的機関の安全指針、学術研究、企業によるアンケートは、それぞれ目的と証拠の強さが異なります。診断や治療を目的とした記事ではないため、赤ちゃんの体調や発達に不安がある場合は、かかりつけの小児科、保健師、助産師などへ相談してください。
執筆:東雲 朝陽(四季と暮らしの物語ライター|行動観察エッセイスト|生活文化アナリスト)


