1歳9ヶ月の突然の夜泣きは、発達異常とは限りません。まず体調を確認し、生活や睡眠環境の変化を一つずつ見直すことが大切です。
それまで朝まで眠っていた子が急に泣き始めると、「何かの病気?」「発達障害のサイン?」と不安になりますよね。結論からいうと、夜泣きだけで発達の遅れや障害を判断することはできません。
1歳9ヶ月で夜泣きが突然始まることはある?
1歳半を過ぎてから夜泣きが始まる子はいます。時期だけを理由に、異常だと決めつける必要はありません。
参考となる医師監修記事「1歳半以降の夜泣きとその対策法4つ」は、2019年11月16日に掲載され、2026年3月30日に更新されました。監修者は、小児科専門医でアルテミスウィメンズホスピタル小児科部長の大越陽一先生です。
同記事では、一般に夜泣きは1歳から1歳半ごろまでに落ち着くことが多いものの、1歳半を過ぎても続く子や、それまで眠れていたのに後から始まる子もいると説明されています。
そもそも「夜泣き」には、医学上の厳密な定義がありません。日中は普段どおりに過ごしている子が、夜間に理由が分からないまま繰り返し泣く状態を、日常的に夜泣きと呼んでいます。
泣き方にも個人差があります。
- 眠ってから数時間おきに泣く
- 毎晩ほぼ同じ時刻に目を覚ます
- 目を閉じたまま泣き続ける
- 保護者を探して抱っこを求める
- 一度起きるとなかなか寝つけない
医師監修記事では、夜泣きのピークは生後6ヶ月から1歳前ごろで、生後3ヶ月から1歳までの約20%が週3日以上夜泣きをするという報告も紹介されています。ただし、これは集団としての傾向であり、1歳の誕生日を境に必ず終わるという意味ではありません。
2005年に米国小児科学会誌『Pediatrics』へ掲載された「Sleep-Related Nighttime Crying(Yonaki)in Japan」は、日本の子どもの夜間の泣きについて調べた横断研究です。対象は東京都内の乳児170人、幼児174人、就学前の子ども137人とその保護者、合計481組でした。
この研究でも幼児期以降の夜間の泣きが報告されており、夜泣きが乳児期だけに限られる現象ではないことが分かります。一方、横断研究で確認できるのは要因同士の「関連」であり、特定の習慣が夜泣きを引き起こしたと断定することはできません。
1歳9ヶ月の夜泣きは発達障害のサイン?
夜泣きだけでは、発達障害や発達の遅れを判断できません。
1歳9ヶ月ごろは、歩く、走る、言葉を理解する、自分の希望を表すといった力が大きく伸びる時期です。一方、気持ちを言葉で説明したり、興奮や不安を自分で鎮めたりする力は、まだ育っている途中です。
この時期に睡眠が一時的に乱れることはありますが、「発達が進んだから必ず夜泣きする」「夜泣きがあるから発達に問題がある」という因果関係は確認されていません。
夜泣きと発達は、次のように分けると整理しやすくなります。
- 睡眠の発達:夜中に目覚めたあと、再び眠る流れがまだ安定しない
- 運動や言葉の発達:行動範囲が広がり、日中に受け取る情報が増える
- 心の発達:自己主張や保護者と離れる不安が表れやすくなる
- 生活環境の変化:保育園、旅行、引っ越しなどの影響を受けることがある
判断するときは、夜間の泣き方だけでなく、昼間の様子も見てください。よく遊び、食事や水分が取れ、周囲への関心があり、これまで身につけた動きが保たれているなら、夜泣きだけから発達異常を想定する必要は通常ありません。
反対に、昼夜を通して元気がない、反応が乏しくなった、できていたことが急にできなくなったなど、夜泣き以外にも変化がある場合は小児科や地域の発達相談窓口へ相談しましょう。
1歳9ヶ月に必要な睡眠時間は?
米国睡眠医学会の2016年の合意声明では、1~2歳の推奨睡眠時間は昼寝を含めて1日11~14時間です。この数値は診断基準ではなく、健康な子どもの睡眠を考えるための目安です。
昼寝の長さや必要な総睡眠時間には個人差があります。「14時間眠らせなければ」と数字だけを追うより、朝の機嫌、日中の眠気、昼寝と夜の睡眠のバランスを確認するほうが実用的です。
筆者としては、夜泣きが始まったときほど「夜に何回起きたか」だけでなく、24時間全体でどのくらい眠れているかを見ることが重要だと考えます。夜だけを切り取らず、一日の睡眠を一枚の地図として見る視点です。
1歳9ヶ月の夜泣きが突然始まる5つの原因
原因は一つとは限りません。突然始まった場合は、直前に変わったことを確認するのが近道です。
1.睡眠と生活のリズムがずれた
起床、食事、昼寝、入浴、就寝の時刻が大きく変わると、夜の睡眠も不安定になりやすくなります。
2005年の日本の研究では、頻繁に夜泣きする幼児と不規則な就寝時刻との関連が報告されました。ただし、研究の性質上、不規則な就寝が直接の原因だとは断定できません。
休日だけ朝寝坊する、昼寝が夕方まで延びる、旅行後に時刻がずれたといった変化がなかったかを振り返ってみましょう。
2.保育園や家庭の環境が変わった
保育園への入園やクラス替え、引っ越し、帰省、きょうだいの誕生、保護者の仕事復帰などは、幼い子どもにとって大きな変化です。
楽しい出来事も刺激の一つです。昼間は元気に見えても、静かになった夜に落ち着きにくくなることがあります。
ただし、保育園に通い始めた時期と夜泣きが重なったからといって、「保育園が原因」とは限りません。起床時刻、昼寝、夕方の疲れ、親子が離れる時間など、複数の変化が同時に起きている可能性があります。
3.日中の刺激や興奮が残っている
人の多い場所への外出、初めての遊び、強く叱られた経験など、感情が大きく動いた日は眠りへ切り替えにくくなることがあります。
米国小児科学会の保護者向け情報では、寝る前の活発な遊びを避け、入浴や読み聞かせなどの静かな習慣を毎晩同じ流れで行う方法が紹介されています。
刺激をすべて避ける必要はありません。夕方から照明や遊びを穏やかにして、「入浴、着替え、絵本、消灯」のような予測しやすい順番をつくりましょう。
4.寝室や衣類が不快になっている
寝かせたときは快適でも、夜中に室温が変わったり、汗で衣類が湿ったりして目を覚ますことがあります。
季節の変わり目は、就寝時と明け方の温度差が広がりがちです。首の後ろや背中が汗ばんでいないか、体幹が冷えていないか、寝具が重すぎないかを確認してください。
適温は季節、湿度、衣類、寝具によって変わります。一律の室温だけに頼らず、その子の汗や肌の状態を見ることが大切です。
5.病気や体の不快感が隠れている
「突然始まった」という場合、最初に確認したいのが体調です。
- 発熱、せき、鼻づまりがある
- いつもより食欲や機嫌が悪い
- 耳を繰り返し触る
- 湿疹や強いかゆみがある
- 便秘、下痢、嘔吐がある
- おむつ、空腹、衣類の締めつけが気になる
英国の公的医療サービスNHSは、幼児の耳の感染症で、耳をこする、発熱、食欲低下、機嫌の悪さ、夜間の落ち着かなさなどが見られると案内しています。ただし、耳を触るだけで中耳炎とは診断できません。気になる症状が重なるときは小児科で確認しましょう。
2005年の日本の研究では、頻繁な夜間の泣きと慢性的な湿疹にも関連がありました。湿疹がすべての夜泣きの原因という意味ではありませんが、皮膚の赤みやかゆみを確認する根拠にはなります。
夜泣きへの対応は?家庭でできる4つのこと
安全と体調を確かめたうえで、夜の刺激を抑え、朝からの生活リズムを整えます。
1.泣いた直後は安全と体調を確認する
最初に呼吸、顔色、発熱、嘔吐、痛がる様子、けがの可能性を確認します。おむつ、空腹、暑さや寒さなど、すぐに解消できる不快感も見てください。
目立った異常がなければ、照明を明るくしすぎず、短い言葉で安心を伝えます。深夜にテレビをつけたり、元気に遊ばせたりすると、さらに目が覚めてしまいます。
抱っこするか、背中をなでるか、少し見守るかは、子どもと家庭によって異なります。泣き疲れるまで放置する方法を、すべての家庭に共通する正解として扱う必要はありません。
2.朝から夜までの時刻をそろえる
夜泣き対策では寝かしつけだけに目が向きがちですが、朝の起床時刻が一日の土台です。
- 起床時刻を日によって大きくずらさない
- 朝はカーテンを開けて明るくする
- 食事と昼寝の時刻をなるべくそろえる
- 日中は年齢に合った遊びで体を動かす
- 夕方遅くまで昼寝を延ばさない
- 就寝前は毎日同じ静かな流れをつくる
米国小児科学会は、起床、食事、昼寝、遊び、就寝の流れを一定にすることや、予測できる就寝前の習慣をつくることを勧めています。
一方、昼寝を急にやめたり、眠らせるために極端に疲れさせたりするのは避けたいところです。その子の機嫌と総睡眠時間を見ながら、少しずつ調整してください。
3.寝室と最近の環境変化を見直す
室温、湿度、衣類、寝具、光、音を確認します。新しい園生活や旅行などの変化があったときは、寝る前の流れだけでも以前と同じにすると、子どもが次の行動を予測しやすくなります。
お気に入りの絵本を読む、同じ子守歌を歌うなど、場所が変わっても再現できる習慣を一つ持っておくと便利です。
4.数日間の睡眠記録をつける
原因を頭の中だけで探すと、保護者の不安も膨らみます。次の項目を3日から1週間ほど記録してみましょう。
- 朝起きた時刻
- 昼寝の開始と終了
- 就寝した時刻
- 夜泣きした時刻とおおよその長さ
- 外出、保育園行事、来客などの変化
- 発熱、鼻水、便、食欲、湿疹
- どの対応で落ち着いたか
記録を並べると、昼寝が遅かった日、外出が長かった日、鼻水が強かった日などとの重なりが見えることがあります。
これは家庭で原因を診断するためのものではありません。受診時に「いつから、どのくらい、何と一緒に起きたか」を医師へ具体的に伝えるための資料です。
小児科の受診目安と夜驚症との違いは?
体調不良を伴う、強い夜泣きが続く、家族が消耗している場合は小児科へ相談しましょう。
昼間も元気や食欲がない、耳や体の一部を痛がる、湿疹やかゆみで眠れない、いびきや呼吸音が気になるといった場合は、夜泣きだけの問題と考えず受診してください。
厚生労働省の母子健康手帳様式では、呼吸が苦しそう、ぐったりしている、何度も吐く、けいれん、意識を失うといった症状がある場合は、医療機関を受診するよう案内しています。
さらに厚生労働省の救急案内では、子どもの唇が紫色、顔色が明らかに悪い、激しいせきやゼーゼーで呼吸が苦しそう、呼吸が弱い、嘔吐などで水分が取れず意識がはっきりしないといった状態を、迷わず119番を考える症状として挙げています。
判断に迷う夜間や休日は、全国共通の小児救急電話相談「#8000」や、日本小児科学会監修の「こどもの救急」を利用できます。
夜泣きと夜驚症は同じ?
夜泣きと夜驚症は同じものではありません。米国小児科学会の情報では、夜驚症は幼児期から就学前に多く、深い睡眠になりやすい夜の前半に起こると説明されています。
夜驚症では、叫ぶ、汗をかく、激しく動く、目を開けていても保護者を認識しない、落ち着いたあと再び眠り、翌朝覚えていないといった特徴があります。
ただし、1歳9ヶ月の激しい泣きを保護者だけで夜驚症と判断することはできません。安全を確保し、頻繁に繰り返す場合は、発生時刻や様子を記録して小児科へ相談してください。
1歳9ヶ月の夜泣きについての考察とまとめ
筆者としては、突然の夜泣きを「発達している証拠」と美化しすぎることにも、「発達異常のサイン」と恐れすぎることにも慎重でありたいと考えます。
発達の途中で睡眠が揺らぐことはあります。しかし、「発達」という言葉は、原因が分からないときに何でも閉じ込める箱ではありません。鼻づまり、耳の不快感、湿疹、室温、生活時刻のずれなど、確認できることから見ていくのが現実的です。
また、保育園、添い寝、不規則な就寝時刻など、研究で関連が示された一要因を犯人扱いするのも適切ではありません。複数の変化が同時に起きていることが多く、横断研究だけでは原因と結果の向きを確定できないからです。
わたしが暮らしの視点から大切だと感じるのは、「泣かせない方法」を一晩で探し当てようとしないことです。生活リズム、寝室、体調、安心できる関わりを小さく調整し、数日単位で変化を見ます。
夜泣きが続いて保護者が眠れず、心身ともに限界へ近づいているなら、病気らしい症状がなくても相談して構いません。家族で夜間対応を交代する、日中に休める時間を確保する、かかりつけの小児科や地域の育児相談へ状況を伝えることも大切な対策です。
1歳9ヶ月で突然始まった夜泣きは、それだけで発達異常を示すものではありません。まず体調と安全を確認し、生活リズム、環境変化、寝室の快適さを見直しましょう。
本稿は、医師監修記事、米国小児科学会、米国睡眠医学会、厚生労働省、日本小児科学会などの公開情報を照合して構成しています。個別の診断に代わるものではないため、強い症状や昼間の変化があるとき、家族が消耗しているときは、遠慮なく医療機関へ相談してください。
よくある質問
1歳9ヶ月の夜泣きはいつまで続きますか?
続く期間には個人差があります。数日で落ち着く子もいれば、生活の変化に合わせて波を繰り返す子もいるため、体調と生活記録を見ながら経過を確認してください。
突然の夜泣きは発達障害のサインですか?
夜泣きだけでは判断できません。昼間の反応や遊び、食欲、これまでできていたことにも変化がある場合は、小児科や発達相談窓口へ相談しましょう。
夜泣きしたら、すぐ抱っこしたほうがいいですか?
まず呼吸、顔色、体調、おむつ、暑さや寒さを確認します。異常がなければ、静かな声かけや背中をなでる方法を試し、必要に応じて抱っこして構いません。
執筆:東雲 朝陽(ライフスタイルライター)


